サ高住を深く知るコラム01サ高住を深く知るコラム01

サ高住ってこんな住まい
特徴と誕生の理由を解説

目次目次

01
サ高住とは?

2011年に誕生した住まいのかたち

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は、2011年に厚生労働省と国土交通省が管轄する「高齢者の居住の安定確保に関する法律(通称高齢者住まい法)」が改正されたことにより誕生しました。 サービス付きの高齢者向け住宅、と名前にあるように、高齢者をサポートするサービスと、バリアフリー対応など高齢者が暮らしやすい建物の構造を備えていることが特徴です。 定期的な安否確認や、生活相談などの見守りサービスを提供してくれる、高齢者にやさしい造りの賃貸住宅と考えていただくとわかりやすいでしょう。

サ高住の登録制度が生まれた理由

サ高住の登録制度が開始された背景には、少子高齢化が進む日本社会が抱える様々な問題があります。

「超高齢化社会」と称されるほど、人口の高齢化が進んでいる日本。 統計局の調査によれば、2036年には、日本の総人口の3人に一人が65歳以上の高齢者になると見込まれています。 こうして増加している高齢者のうち、約8割が老人ホームなどの高齢者向け施設ではなく、自分の家で生活をしています。 しかし、身体能力が衰えがちな高齢者にとって、一般的な住宅での暮らしは、事故やケガのリスクが伴うことがあります。 次の表を見てください。

事故の内容65歳以上の死亡者数
スリップやつまづきなどによる平らな場所での転倒7,196
浴槽内での溺水5,635
階段や段差などからの転落や転倒496
建物からの転落246
出展:統計局『人口動態調査:不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数』2018年公開版

一年間で1万人以上の高齢者が、転倒や浴槽での溺水などで亡くなっています。 段差解消や手すり設置などがされていない一般住宅には、高齢者にとって多くの危険が潜んでいるのです。

また、65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、約半数は一人、または夫婦のみで生活しており、老々介護や孤独死といった社会問題もたびたび浮上しています。

増加する高齢者の数、住宅内での事故の危険性、頼れる若い世代が身近にいない高齢者たち。 こうした背景から、国は高齢者が必要なサポートを受けながら自宅で安定して暮らせる環境を整備するべく、サ高住の登録制度をスタートさせたのでした。

運営は民間、監督は行政

では、見守りサービスを提供しているバリアフリーの賃貸住宅ならすべてサ高住なのかというと、そうではありません。 「高齢者住まい法」は、建物の構造、提供するサービスの内容、入居者との契約内容にそれぞれ条件を定めており、その条件を満たしている賃貸住宅の所有者が、各都道府県の窓口に登録申請し、認可を得ることで、サ高住と名乗れるようになります。 そうして登録されたサ高住に対し、国は助成金の給付や融資などの支援を行い、サ高住の供給促進を行っているのです。

サ高住登録制度の仕組み

サ高住登録制度の仕組み

特別養護老人ホームやシルバーハウジングなど公営の高齢者向け住まいは、慢性的な供給不足の状態にあります。 サ高住は国が監督、補助を行いながら、創設、運営を民間に任せることで、サービスや建物の品質を一定に保ちつつ、数の普及を成功させています。 現に、サ高住ドットジェイピーがサービスを開始した2013年時点で、全国合計3万戸ほどだったサ高住の登録件数は、7年後の2019年には約8倍の24万戸余りにまで増加しています。

02
サ高住の特徴

では、実際にどのような条件を満たせばサ高住として認められるのでしょうか。 「高齢者住まい法」に定められたサ高住の必要要件は、入居対象、建物の構造、サービス、契約内容のそれぞれにおいて設けられています。

項目条件
入居対象
  • 60歳以上の高齢者
  • または要介護、要支援認定を受けている者
設備・構造
  • 居室の床面積は原則25㎡以上
  • 居室に浴室、水洗便所、台所、洗面設備、収納設備が備わっている
  • 高齢者の身体状況にふさわしい設備・設計が施されていること(段差解消、手すりやエレベーターの設置など)
サービス
  • 状況把握
  • 生活相談
  • 任意で食事提供や訪問介護などのサービス提供
契約内容
  • 書面による契約であること
  • 居室の位置が明示されていること
  • 入居者の身体状況の変化等によって運営側が一方的に契約を解除することはできないよう定められている
  • 運営者は家賃・敷金・サービス対価以外の金銭を入居者から徴収してはならない
  • 入居時に支払う前払い金の返還ルールについて契約時に説明がなされること
出展:国土交通省、厚生労働省『高齢者の居住の安定確保に関する法律』2017年4月改正

入居対象

サ高住に入居できるのは、60歳以上の高齢者、あるいは、要介護か要支援認定を受けている人です。 また、配偶者か配偶者に等しい間柄の人、あるいは要介護か要支援認定を受けている親族も、同居人としての入居が認められます。

設備・構造

 サ高住の構造は、居室、共同スペースともに、段差の解消、車いすが通りやすいドア幅の確保、廊下や浴室などへの手すりの設置など、高齢者の身体能力に配慮した造りとなっています。

原則として、居室は床面積25㎡以上であり、浴室、洗面設備、水洗トイレ、台所、収納の5つの設備を備えていることになっています。 ただし、共同スペースが施設全体の居室の数に対し十分な広さを備えている場合に限っては、居室の床面積は18㎡以上のケースもあります。 また、浴室、台所、収納の3つの設備に関しては、共同スペースに十分な数、容量で設置されている場合に限り、必ずしもすべての居室に備わっていないこともあります。

サービス

サ高住で必ず提供されるのが、状況把握と、生活相談の2種類のサービスです。

状況把握は、居住者に対して定期的な安否確認を行うサービスで、実施の方法は施設ごとに異なります。 毎日決まった時間に職員が巡回する施設もあれば、居室内にセンサーを設置し、一定時間センサーが動きを検知しない場合には、居室を訪問して安否を確認する、という形で実施している施設もあります。

生活相談は、施設に常駐している介護の専門家が、入居者からの相談に応じるというサービスです。 例えば、入居者の家族からの伝言を預かったり、バスの時間を代わりに調べたりといった、ちょっとした日常生活のサポートが生活相談に含まれています。

契約内容

サ高住に入居するための契約についても、入居者を守るための条件が定められています。

まず、契約は書面によるもので、契約対象の居室は建物内のどの部屋であるのかが明示されていなくてはなりません。

また、入居後に要介護度の重度化など、入居者に身体状況の変化か起こった場合にも、運営者はそれを理由に一方的に契約を解消することはできず、契約解消には必ず双方の合意が必要となります。

そしてサ高住の運営者が入居者に対して請求できるのは、家賃、サービス利用費、敷金のみとなります。 入居時に、敷金や前払い分の家賃・サービス利用費を徴収する場合には、退去時の前払い金の返還ルールについて、あらかじめ入居者に説明をする義務があります。

03
サ高住の今までとこれから

サ高住誕生の背景

民間の事業者が運営し、行政が監督する高齢者向け賃貸住宅の登録制度は、実はサ高住以前にも存在していました。 「高齢者住まい法」は2001年に生まれた法律ですが、2011年のサ高住誕生以前には、高齢者円滑入居賃貸住宅、高齢者専用賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅と呼ばれる3種類の高齢者向け賃貸住宅の登録制度を設け、その供給促進を行っていたのです。 3種類の住宅の概要は、次の通りです。

住宅の種類特徴
高円賃
  • 高齢者の入居を拒まない
  • 居室の床面積は原則25㎡以上
  • 居室には原則として台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室が備わっている
高専賃
  • 60歳以上の単身者、または夫婦世帯
  • 居室の床面積は原則25㎡以上
  • 居室には原則として台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室が備わっている
高優賃
  • 60歳以上の単身者、または夫婦世帯
  • 全5戸以上
  • 原則として耐火構造、準耐火構造である
  • 居室の床面積は原則25㎡以上
  • 高齢者の身体機能を考慮した設計、設備を備えている
  • 緊急時に対応するシステムを備えている

この表を見てわかる通り、高円賃、高専賃、高優賃のいずれにも、サ高住の登録要件にあるような生活支援サービスに関する規定はありません。 サービス提供を行わない住宅に関しては、入居後健康面に不安が出てきた入居者は、生活支援や医療・介護ケアが受けられる住宅を求めて転居せざるを得なかったのです。

高齢者向け賃貸住宅だけでは、高齢者の居住の安定を確保するには足りません。 加えて、全国に42万人いる特別養護老人ホームの申込者のうち、およそ3分の一は、要介護度が比較的軽い1~2の人々。 こうした現状から、ちょっとした支援さえ受けられれば、自宅での暮らしを継続できる高齢者のための住まい供給の必要性が唱えられ、2011年の「高齢者住まい法」の改正へと至ったのでした。 その際、高円賃、高専賃、高優賃の登録制度は廃止され、高齢者向け賃貸住宅の概念はサ高住へと一本化されたのです。

これからのサ高住の役割

「高齢者の介護施設」ではなく、「高齢者の暮らしに適した住まい」としてスタートしたサ高住。 今では様々な可能性に注目が集まっています。

まず一つは、2012年に厚生労働省が行った介護保険法の改正によりうまれた、「地域包括ケアシステム」という高齢者の支援体制の実現です。

「地域包括ケアシステム」とは、住まい・生活支援・介護・医療を一体となって提供できるシステムのことです。 高齢者が終生、住み慣れた地域で、必要なサポートを受けながら暮らすことのできる環境づくりが目的となっています。

住まいと生活支援が一体となっているサ高住は、さらに介護、医療との連携を強化することで、元気なうちから入居ができて、さらには介護が必要になって以降も暮らし続けることのできる高齢者向け住まい、としての役割も期待されるようになりました。

また、近年は人口減少に伴って空き家が増加し、大きな問題となっていますが、それに対し、空き家を活用してサ高住を設置する取り組みも全国的に広まっています。 例えばあるサ高住運営会社は、集合住宅の空室を借り上げバリアフリー化し、敷地内に介護の専門家の駐在場所を設置することで、団地の一部をサ高住として提供しています。近年では「分散型サ高住」というものも生まれています。 例えば、点在する空き家の一戸建てを改装し、さらにそれぞれの家の半径500m以内に位置する場所に介護の専門家が常駐する拠点を設け、各戸の居住者に生活支援サービスの提供を行うことで、サ高住として成り立っているものが挙げられます。

こうした建物の既存ストックを用いたサ高住の供給は、国土交通省も推奨しており、実際に介護の専門家の駐在場所に関する規制を緩和するなどの対応も行いバックアップしています。

まとめ

2011年の「高齢者住まい法」の改正によって生まれた高齢者向け住宅、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)。その特徴は、大きく分けて次の4つです。

  • 60歳以上の高齢者や、要介護、要支援認定を受けている人が入居対象
  • 高齢者が暮らしやすい建物の設計
  • 安否確認や生活相談などの生活支援サービスが受けられる
  • 入居者の居住の安定に配慮した契約内容

上記条件を満たした住宅が、都道府県によって認可を受けることで、正式にサ高住と名乗れるようになります。

このサ高住の登録制度は、ちょっとしたサポートさえ受けられれば自立した暮らしを続けられる高齢者のための住まい供給として作り出されたものでした。 現在急速に数を増やしているサ高住は、その在り方も多様化しつつあり、「比較的元気な高齢者向けの住まい」から、「元気なうちから入居できて、要介護になってもずっと暮らせる住まい」としての役割も、徐々に担うようになっています。

この記事を書いた人

吉田智子

サ高住ドットジェイピー専属アドバイザ―
吉田智子

20代で不動産関連会社に就職。その後在宅介護の経験を経て、高齢者向けの住宅事情に関心を持つように。
不動産と高齢者福祉、双方の観点からサービス付き高齢者向け住宅を解説します!